朝4時起床。
身繕いを整えたらアパートの駐車場に停めてあるどちらかの車に乗って会社に出勤!市場なので朝が早いのは当たり前です
勤務開始は5時から、もうすでに持ち込まれてだだっ広い「売り場」に並べられている「競り(せり)」用の地物野菜などなどを整理して、これまただだっ広い市場(「いちば」ではなくて「しじょう」)の隅々を走りまわったりフォークリフトで駆けずり回って「集荷」と「配荷」をして回ります
※フォークリフトは最初に4、5日かけて資格を取りに行かされました
何十キロ、何百万もする品物を山のように載っけておもにバック走行で走り回ります!
かなり危険!!
時間との戦いなのでとにかく忙しくて荒々しい。。 そこらじゅうで怒号と罵声が飛び交います
介護業界並みの人手不足らしい流通業界の「クロネコヤマト」やら「サガワ」の集荷場を想像してもらうとわかりやすいかもしれません
...余談ですが「市場」と一口に言っても大きく分けると鮮魚市場と青果市場の二つに別れていて、テレビでおなじみの「鮮魚市場」(築地とか)は「魚河岸(うおがし)」と呼ばれるのに対して、自分が就職した「青果市場」は「やっちゃ場」なんて呼ばれ方をしていました
営業職といっても要は「商人に売る商人」のことで卸売業界の俯瞰図をザックリ説明すると...
生産者(農家の皆様)・集荷組織(農協とか)
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荷受け 市場(大卸)←自分ら
⬇︎
販売(卸す) 市場(仲卸)
⬇︎
各小売店
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消費者(エンドユーザー)
と、いうような流れになっていてメインの販売相手は市場内の仲卸さんや市場の外から買い付けに来る小売店や八百屋さんやバイヤーの皆様達でした。
よくテレビでやってる「競り」を見ているとわかると思うのですが、大声を張り上げて商品の説明や落札価格を大勢相手に提示しているのが「競り人(せりにん=大卸側:売り手)」で、頭に番号のついた帽子をかぶって手を上げて指の形で落札価格を提示しているのが「仲買人(仲卸・バイヤー=買い手)」です
市場なので契約をしている決まった相手に対してしか販売は行いません(行えない)。
売上高や利益率や前年比率や取扱重量には当然ノルマがありましたが、所謂「外回りして飛び込み営業」みたいなことはありませんでした。
出勤して、朝の売り買いが終わったら売場の整理をして事務所に上がって値付けと伝票の始末。
ここで決められる「仕切り値(通称:仕切り。仕切り値を決めることを「仕切る」と言います)」というものの全国平均値のことが「相場(卸値)」というものになります。
最初の頃は、昼間はひたすらお偉いさん方の有難いお話しを聞いて回り、18時ごろにアパートに帰ると今度はひたすらレポートを書きます。
...相部屋のヤンキーくんは帰ってくるとすぐにパチンコ屋に直行するタイプだったのでぶっちゃけ助かりました笑笑
「ザ・老害の鑑」って感じの社長様と会長様がいらっしゃって「最近の温室育ちの軟弱な若者があーっ」っと輝かしい数十年前の日本の苦難の歴史について語ってくださいました。
ありがち....
長ったらしい社訓を暗記してみんなの前で絶叫するタイプの企業でした。
流通業界というか卸売業界に入って思ったことはとにかく「ガラが悪い」。。
自分たちのことを「海千山千」とか言うのが大好きな仲買人やバイヤーたち。
取引相手は、商店街の八百屋のオヤジから年商1兆2000億円の日本代表クラスの大企業のバイヤーまで文字通り有象無象が跳梁跋扈するそれはそれは大きな大きな魔窟でした。
ヤ◯ザみたいな人も少なくありませんでした。
24時間365日、ひっきりなしに出入りするトラックのドライバーたち。
刺青だらけで髷を結ってタバコをふかしながら怒鳴り散らす....人も中にはいました。
粗野で暴力的で威圧的で攻撃的な人種が「舐められたら終わり」って具合にあらゆる駆け引きを繰り広げます。
最も原始的で純粋で濃厚な「商い」がそこにはありました。
......今となっては「介護職」に身をやつしている自分は社会に出たての頃は「商人」だったのです笑笑
そんなある日、上司や先輩にどやされながらフォークリフトであっちゃこっちゃに荷物を運んで回っていた時のこと...
前を横切ってはまずい相手の前をフォークリフトで横切ってしまいました!!
右も左もわからない中で忙しくてテンパっていた自分は、「市場の主」を自称する要注意人物の前をフォークリフトで通り過ぎ、そのお方(どこぞの仲卸の古老)様の通行を妨げてしまったのです!
突然、後ろから怒鳴り散らされて呼び止められフォークリフトから引きづり降ろされました(文字通り)笑笑
呆気にとられているところを、新入りの若造が俺様の前を挨拶もなしに横切るタァどういう了見だゴルァっ!と胸ぐらを掴まれて怒鳴り散らされました笑笑
とくに珍しい光景ではないらしくて周りにいた関係者と思しき皆々様は平然としていました。
近くにあった野菜だか魚だかが入っていたらしい発砲スチロールの生臭い白い箱で滅多打ちにされました。笑笑
「暴力慣れ」だけは誰にも負けない自分は「はぁ...失礼いたしました」と薄ぼんやりと謝りました。
それが火に油を注いでしまったようで、顔面に飛んでくるグーパンチ。無様にひっくり返ることだけは足を踏みしめてなんとか耐えました...口の中に違和感。
訳のわからないことを喚きちらすその老人から、誰かに引っ張られて距離をとらされ「早く失せろ」と言われてそそくさとフォーリフトに乗って立ち去りました
昔から怒鳴られたりキレられたりすると半笑いになってしまう自分は、それで余計に相手の怒りを煽ってしまうのは自覚して居るのですがなにかもう彫り込まれてしまった習性なのでなかなか直りません...
荷物を置いて戻ると「なにやってたんだこのノロマがっ!っヤル気あんのかこるぁ」とどやされてから仕事を再開しました。
入社一年目。
失ったもの
・左上顎奥歯×1