むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは毎日山に徘徊に、おばあさんは週6で川の近くのデイサービスに通っていました。
ある時、おばあさんがデイサービスのレクのお散歩中に、川の上流からどんぶらこどんぶらこと大きな桃が流れてきました。
付き添いの介護職がずぶ濡れになって桃を施設に持ち帰り切ってみると中から元気の無い男の子が生まれました。
(kt35.6°c Ps38 Bp96/43 Spo2 86% )
〜〜〜〜〜〜時は流れてそれから32年後。
おばあさんに引き取られた桃太郎は働きもせず、おじいさんとおばあさんの年金を、ほぼほぼソシャゲのガチャにぶち込んでダラダラ暮らしていました。
桃太郎は廃課金房だったのです
ところが、ある日 山に徘徊に行ったおじいさんがそのまま帰ってきませんでした。
歩行器の使用を頑なに拒絶し無理に歩いていたおじいさんはバランスを崩して滝に転落、そのままどんぶらこどんぶらこと下流のおばあさんの通っているデイサービス近くの川まで流されて水死体となって発見されました。
事故報告書を書く人は誰もいませんでした。
困ったのは桃太郎です。
ふたり分の年金を食い潰しながら優雅なニート生活を送っていましたが片方が死んでしまったのでもうそうはいきません。
おばあさんの介護なんてまっぴらです。
そこで桃太郎はネットの広告に載っていた「介護付き有料老人ホーム「鬼ヶ島」」におばあさんを放り込む事にしました。
桃太郎が事前面接のため鬼ヶ島を目指して自転車を漕いでいると、市役所から過労でふらふらの認定調査員のキジさんがやってきました。
「桃太郎さん桃太郎さん、お婆さんの受けている要介護認定、要支援認定に落としてくれませんか?介護保険の節約の為に」
桃太郎はシカトして通り過ぎました。
もう少し進むと前の方からブラック介護施設の入居相談員の、鬱病のイヌさんがやってきました。
「桃太郎さん桃太郎さん、お婆さんの介護保険、全額うちの施設で使いませんか?」
桃太郎はシカトして通り過ぎました。
もうしばらく進むと今度は鬼ヶ島のケアマネージャーのサルさんがやってきました
「桃太郎さん桃太郎さん、私には何の権限もありません。お婆さんの入居を認めるか認めないかは、現場を支配している施設長の愛人のクソ性格の悪い看護師が決めるのです。」
そう言ってサルは首を吊って死んでしまいました。
鬼ヶ島に到着した桃太郎は誠心誠意頭を下げてお婆さんの入居を認めてもらいました。
条件の1つに桃太郎がこの施設の介護職員として働くことが必要でした。
もとよりまともな社会経験の無いニートの桃太郎には介護職くらいしか働き口が無かったので了承しました。
入居してからというもの、お婆さんはベッドに縛り付けられ乱暴な食事介助によって誤嚥性肺炎を起こして無料老人ホーム「天国」に逝ってしまいました。
桃太郎改め介護太郎は毎日毎日、朝から晩まで馬車馬のように必死に働きましたが劣悪な労働環境と低賃金、重労働で体を壊して過労死してしまいました。
介護付き有料老人ホーム「鬼ヶ島」には長い入居待ちの老人たちの列ができていましたが中の職員はガラガラでした。
めでたくなしめでたくなし