孤高の底辺。うんこ拭き(介護福祉士)おじさんの戯言ブログ💩:®️

“奴隷(介護職)”をクビになって、“社畜(葬祭屋)”になってまた介護職に復職したおっさんの随筆集✍️

親から虐待されて育った大人。[20]

もし、これが戯曲ならなんて酷いストーリーだろう?進むことも戻ることも出来ずにただ、舞台に立っているだけなのだから  ポルノグラフィテ  [アゲハ蝶]

 

所属した「技術部門」の職員は全部で13人。

 

機構(舞台設備管理/大道具) 5人

音響                                     4人

照明(⬅︎自分はここ!)         4人

 

かなり大規模な劇場だったけど技術部門は13人だけで、それぞれが3つのセクション(機構、音響、照明)に分かれて働いていました。

 

介護施設に例えるなら、介護、看護、リハビリみたいな感じ?

 

業界用語で、1つの施設の所属として働いている技術屋のことを「小屋付き」と呼び、ライブやコンサートのツアーに同行して全国を回る技術屋のことはまた別の呼び方がありました。

 

13人の中で女性は一人だけ。自分の配属先の「照明科」の四人の中のひとりで自分を除けばこの技術部門の中で一番の新入り、2つ、3つ年下の先輩でした(以下:先輩)。

その他の照明科のメンバーはリーダー格の50代の大ベテランのおっさんが一人(以下:長老)、30代半ばの茶髪の髭面が一人(以下:茶髪)。そこに、ど素人新人の自分が加わった4人でした。

 

技術部門全体のリーダーは機構のリーダーの30代半ばのサラサラヘアー(以下:サラサラ)、機構科所属で舞台監督の40代半ばの黒縁眼鏡のおじ様👓、音響は主に外部の技術系派遣会社の所属の人たち。

 他にも事務方の外部交渉係やら、広報スタッフやら調整役、それに芸術監督(物凄い有名人)様やら館長さんやら、劇場所属の劇団員の人たちがいました。

 

 

結論から言うとこの転職、全然大丈夫じゃありませんでした。大失敗でした。最悪でした。完全なる挫折でたったの4ヶ月で逃げ出しました。

 

職人系の仕事だし粗野で荒っぽい人が多いだろうなと思ってはいたのですが、完全に「見て覚えろ系」の教育体制。ハナっから「興味があったから」で足を踏み入れた自分のことを、技術部の皆様は心底気に入らなかったらしくて凄まじいイジメと攻撃を受けましたwww

 

超専門分野の職人の世界。しかもその筋では間違いなく日本トップクラスの一流の現場に「興味があったから入ってみました!なんにもわかんないけどね⭐️テヘペロ」な素人が委託職員でいきなり放り込まれてきた。そりゃあ気に食わないことでしょう。。

ただ、自分が勝手に「イジメと攻撃」と受け取ってるだけで実際そんなことはなかったのかもしれないけれど、、

 

とりあえず「そいつから教われ」と言われて、紅一点の女性社員の先輩のあとをついてまわったのですが、その先輩も年が近い「後輩」が出来たのが嬉しかったらしくて本当に丁寧に、いろいろなことを教えてくださいました。

照明の灯体(ライトの本体)の種類について、設置してある場所や用途や、舞台や劇場の専門用語や舞台設備について、配線の繋ぎかた、電球の交換の仕方、光に色をつけるためのフィルムの種類と番号について....

 

必死にメモを取って、とったメモをまとめて、命綱をつけて高いところに登って舞台の奈落の下に潜り込んで手を火傷だらけにしながらめちゃくちゃ熱く重い機材と灯体を運び回って....

 

大型トラックの荷台に乗って演目に使う為のあれこれを取りに行ったり、積み込んだり下ろしたり...

 

ある時、上司の茶髪から「明日までに全部覚えてこい」と床に放り投げられた大きな見取り図。劇場内にいくつかある舞台の「主ホール」の方の舞台照明の配置図でした。

 配置されている照明の数は軽く700以上(正確な数は783)、種類もまばらで配置されている位置も地上27mの天井裏から床下(奈落)まで多種多様。流石に勤めだして一月弱程度の素人に1日で暗記させるのは無理ってもんだろ..な内容でした。

 

4人しかいない照明科(長老、茶髪、先輩、自分)の中でこの“茶髪”とは初見から「あー、相性悪いだろな」と瞬時に悟っていたのですが、案の定でした。

 

決して人から好かれるタイプではない僕。

 子供の頃から友達が多かったことはないし、どんなに頑張っても好かれることも愛されることも出来ない自分はとかく、「敵を作りやすいタイプ」でした。決して自分から攻撃的に接したり、敵対行動をするわけではない(している自覚は無い)けど、なにかと冷たくて生意気に見えるようで本当に人付き合いがうまく出来ません。

 相性の悪い人間とは本当に極端に相性が悪い!...が自分の習性です。

当然、仕事だからそんなことも言ってられないので「シャカイジンラシク」振る舞うのだけれど。

 

一晩かけて必死に暗記したのだけど、次の日の「テスト」の結果はボロボロ。

茶髪は、自分が間違える度にテーブルの上に置いてある文房具やら書類やら本やらを腕を払って床にぶちまけたり、テーブルの脚やら椅子を蹴り飛ばしてひっくり返して怒鳴り散らしたり....懐かしの市場の商人たちのような凶暴性とパワハラっぷり(..まだ「パワハラ」なんて言葉ない時代だったけど)を惜しげなく発揮していました。

市場と違うところは単純な暴力性じゃなくて「敵意」と「悪意」があるところ。

 

 

               カ ラ サ ワ ハ ヤ ト

 

この名前は一生忘れない。

 

でもって周りの連中に「あいつは仕事を舐めてる。俺たちをバカにしている」と言いふらしていました。

 

味方なんて1人もいないし、話を聞いてくれる相手もいない。年の近い先輩は「自分は女だから甘くしてもらってる」と言いつつもいつも泣いていました。

 

始めたばかりで慣れない仕事と、「舞台」という本当に例えようもない独特な世界。

 

そこは

芸術の世界であり、

芸能の世界であり、

技術の世界であり、

職人の世界であり、

文化の世界であり、

美の世界であり、

無の世界であり、

狂の世界であり、

華やかな世界であり、

赤黒い世界であり、

三次元の世界であり、

二次元の世界であり、

虚飾の世界であり、

過去の世界であり、

未来の世界であり、

偉人たちの世界であり、

異人たちの世界であり、

 

とにかく、「非日常」と「日常」の境界線の上にある場所でした。

 

ど素人が足を踏み入れるには無理のありすぎる場所でした。